音ちゃんにお任せ



「一ノ瀬くん。おかえりなさい」




振り向くと、丁度帰ってきたところの一ノ瀬くん。
制服姿の彼は、少しくたびれている。

働き者の一ノ瀬くん。




「おかえりって・・・、あんた、今までいたの?」

「あ、す、すみません・・・。長居をしてしまって」

「別にいいけど・・・」



一ノ瀬くんは門にかけていた手を外し、一度家を見上げると一息ついた。




「送る」

「えっ、いいです。私の家、結構近いんです。びっくりしました!」




私は両手を顔の横で一ノ瀬くんの方に掌を向けて振る。
送ってもらうだなんてそんな!
バイトでお疲れなのに、これ以上帰りが遅くなるのは!




「ダメです!」

「なにが」

「で、ですから・・・。バイトでお疲れなのに」





私なんかのために・・・!




< 54 / 290 >

この作品をシェア

pagetop