音ちゃんにお任せ
「一ノ瀬くん。おかえりなさい」
振り向くと、丁度帰ってきたところの一ノ瀬くん。
制服姿の彼は、少しくたびれている。
働き者の一ノ瀬くん。
「おかえりって・・・、あんた、今までいたの?」
「あ、す、すみません・・・。長居をしてしまって」
「別にいいけど・・・」
一ノ瀬くんは門にかけていた手を外し、一度家を見上げると一息ついた。
「送る」
「えっ、いいです。私の家、結構近いんです。びっくりしました!」
私は両手を顔の横で一ノ瀬くんの方に掌を向けて振る。
送ってもらうだなんてそんな!
バイトでお疲れなのに、これ以上帰りが遅くなるのは!
「ダメです!」
「なにが」
「で、ですから・・・。バイトでお疲れなのに」
私なんかのために・・・!