ヒーローに恋をして
 ユリアの代役で映画に出ることが決まった日。宇野に報告すると、彼は珍しく驚いたように目を見開いて、直後笑って言った。
「そりゃおめでとう。だけどおまえマネージャーなんだから、そっちの仕事も忘れるなよ」
 その言葉に、えっと大きな声を出した。代役とはいえ、映画のヒロインなのだ。マネージャーは降りていいよと当然言われると思っていた。

「不満なの?」
 そう言ったのはコウだ。尋ねるコウの方こそなぜか不満気な顔をしている。
「そりゃあ」
 あたりまえでしょう、というニュアンスを多分に含んでコウを見返した。映画のヒロインが主演俳優のマネージャーをやってるなんて、聞いたことがない。

「いいかトウコ。今回の代役はコウのマネやってたからこそ、もらえた話なんだぞ? コウにデッカイ借りがあるみたいなもんだ。そのコウに報いなくてどうする」
 宇野はよくわからない精神論を述べた。どうしてこの業界の人って、時に任侠の人みたいに借りとか貸しとか言いたがるんだろう。
「ももちゃん、俺前に言ったよね。貸しとくって。借りたら、返さないとね?」
 にこりと笑って、コウが追い打ちをかけるように言った。

「……わかりましたよ」
 諦めのこもったため息交を吐きながら、思い知る。
 
 賽は投げられたのだ。
 投げた賽は、回収しなくてはいけない。
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