ヒーローに恋をして
「今日のポスター、色校からあがってきたら事務所にお送りしますね。あとネット動画の収録日なんですけど」
 木村が出す日程をスマホのスケジュールアプリに入力していると、
「ありがとうございましたー」
 撮影を終えたコウがこちらに戻ってきた。途端に木村が黄色い声をあげる。
「お疲れさまでしたぁ! すごく素敵でしたよ」
 コウはちら、と木村を見て笑みを浮かべた。
「動画撮影って、どういう感じでやるんです? 俺一人ですか?」
「いえ、対談形式っていうか、ちょっとしたインタビュー映像っぽくしたいなって思ってるんですけど」
「それなら、彼女と一緒でもいいですか?」
 コウは桃子を目で示して、驚く木村に重ねて言った。
「実は同じ事務所の先輩で、今度の映画で共演するんですよ。もしよかったら、映画とタイアップぽいことしたいなって。どうですか?」
 甘い笑みを浮かべるコウに、頬を赤く染めた木村は魅入られたようにぼうっと頷いていた。
 
 その様子を黙って見ていた桃子は、呆れとも感心ともつかない思いで腕を組んだ。

 ものの数秒で、大企業と映画のタイアップを約束させた。コウの方がよっぽど敏腕マネージャーといえる。

 木村が桃子を振り返って、ためらいがちに尋ねた。
「マネージャーさん、じゃなかったんですね」
「いえ、マネですよ。でも役者でもあるんです」
 桃子より早くコウが答える。冗談のような言葉に、木村がエ~? と笑う。かっこいい男が言うことは、どんなに意味不明なことでも軽やかな笑いを誘うらしい。桃子は小さくため息をついた。
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