美男子の恋事情!


「ハァハァハァ……っ」



生物の教科準備室がある特別棟の廊下で、乱れた息を整える。


流石に学校と駅の往復を全速力で走るのは、二十代後半の俺には正直きつい。


まだまだ若いつもりでいたけど、もう俺も三十手前のおっさんだ。



「拓真の野郎……明日、絶対に校庭百五十周走らせてやる」



それにしても、あいつら……彼女に対してデレデレし過ぎだっつーの。


見てるこっちが恥ずかしかったわ。


別れ際のあいつらの顔を思い出して、ふっ、と笑う。



拓真も海生も彼女を見る目は優しく、本当に大事にしてるように見えた。


手を繋いで寄り添って、笑い合いながら雑踏に消えていく。



俺には二度と戻って来ない青春。


一度しかない、大事な時間。



春香のそんな大切な時を、俺なんかで無駄にしていいのだろうか。


学校までの道中、走りながら考えたけど考えても考えても答えは同じ。


そんなこといいわけがない。春香には今の時間を大切にしてほしい。


……そう思うけど、それ以上に俺の中で春香を手放したくないという強い感情が湧き出してきた。




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