美男子の恋事情!
自分より20センチ以上高い俺を傘に入れるために背伸びをして。
多分、髪を拭いてくれようとしてるんだと思うけど、身長が足らず額がギリギリ届く範囲で。
今更拭いたって意味がないぐらい全身びしょ濡れの俺を、小さなタオルで必死に。
なんか、不思議な気持ちになった。
今まで暗く落ち込んでた胸にスーッと光が射して、ずっしりと重い何かが軽くなって。
胸の奥深く、体の真ん中辺りがポカポカに暖かくなっていく感じ。
なんでこの子は見ず知らずの人に優しく出来るんだろう。
『ごめんなさい。このタオルじゃ拭ききれないですね……』
しかも、この子が悪いわけじゃないのに謝ってるし。
子犬みたいにしょんぼりしてるし、挙げ句の果てには。
『……俺はいいから』
俺は彼女の傘を押し返す。
『え?』と目を見開く彼女。
『自分が濡れてる』
『っっ‼︎ああ…』
俺を傘に入れようとする余り、自分の背中と鞄が濡れてしまっている。
しかも必死過ぎてそれには気付いていなかったようだ。