紺色の道が終わる場所[短編]



「寂しい」



橋を渡る車の音は遠のいて
僕の耳は彼女の声と、川の鳴る音だけをとらえていた。


感情を表す言葉を紡ぐ彼女は、とても珍しかった。
そして言葉だけじゃなく、視界の端に映るその姿も間違いなく寂しそうで。



「寂しいね」



僕は言った。
それが引き金となったのか
いよいよ彼女の肩は震え出して、つないだ手の力が強くなった。
繋いでいない右手で口元を押さえて、嗚咽をこらえている。
その姿はとても苦しげで、僕は彼女と向き合った。
繋いでいない左手で、うつむいた彼女の頭をぽんぽんと撫でる。
それでもまだ我慢しようとするので、僕はその小さな体を抱きしめた。



「こら、泣け」



そういうと彼女はようやく、小さな嗚咽をもらしはじめた。
彼女が震えるたびに、僕の胸も震えた。


わがままで
頑固者で
変わり者で
“凛としている”彼女


そんな彼女は、初めて僕の胸で泣いていた。
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