ほたるの初恋、消えた記憶
宮東祐吾は父さんの分まで夕飯作ってるし、いい加減にしてほしい。


母さんとじいちゃんばあちゃんも交代しないと夕食が食べられないのだ。


「母さんたち夕飯まだだろうし、民宿へ行ってくるよ。」


「母さんたちはもう夕飯済ましたから、大丈夫だ。」


そうなんだ。


手伝いに行きたかったな。


「急に予約のお客様が増えたのはどうしてなの。」


「母さんの中学の同級生が来て、10名が20名に増えたから慌てたんだよ。」


そうなんだ。


母さんの中学の同級生に会ってみたいな。


「母さんの同級生に会いにいってもいいかな。」


父さんに止められた。


みんなかなりお酒を飲んでて、寝てしまった人もいるからそっとしてあげようと。


「明日は土曜日だから、母さんの手伝い頼むな。宮東君は父さんが家まで送ってくから心配しなくていい。」


「運転手を呼びますから、大丈夫です。」


父さんは宮東祐吾を知ってるみたいで、初めて会った感じではない。


「父さんは宮東祐吾を知ってるの。」


「宮東君は10年前あの高台のお屋敷に住んでて、ほたるも遊びに行った事があったな。」


覚えていない。


宮東祐吾と遊んだ覚えがなかった。


宮東祐吾は父親仕事の都合で東京へ帰ったと言ってるけど、又戻って来たと言う事なのか。


今回は俺一人で戻って来たと言った。


「母はずっと病弱で、去年亡くなりました。」


宮東祐吾が感情を込めずにさらっと言う。


「お父さんはどうしたの。」


「父は仕事の都合で今はアメリカにいます。」


宮東祐吾はまだ17才だよ。


一人であのお屋敷に住むの。


宮東祐吾に兄弟とかいないのかな。


10年前宮東祐吾がこの町にいたと言う信実を、どう受け止めて良いのか分からなかった。

宮東祐吾に10年前の記憶がないことを伝えるべきなのかもしれない。


宮東祐吾とはどんな関係だったのか。


多分同じ幼稚園に通っていたと思う。























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