ほたるの初恋、消えた記憶
リレーは最後の競技だから、落ち着けと自分に何度も言い聞かせた。


緊張して倒れそうだ。


借り物競争が始まる。


「ほたる、緊張し過ぎたよ。」


紙に書いてある物を借りるだけだが、おかしな物を借りろなんて書いてあるかも知れない。


去年の借り物競争で、美幸はお姫様抱っこされ走った。


ハァー。


緊張し過ぎて、うまく歩けない。


ピストルの音とともに、一斉に走り出す。


紙を拾って読むと、【好きな人と二人三脚でゴールしたら、告白をする。】


え、ぇぇー。


好きな人?


ゴールして告白?


どうしよう、どうしよう、好きな人が思いうかばないよぉ。


美幸が走れと言うけど、どうしよう、どうしよう、走りながら美幸がいる応援席に近づくと、祐吾が私の手から紙を奪う。


ちょっと、待って!


祐吾がタスキで自分の足と私の足を結ぶ。


「ほたる、行くぞ。」


どこへ?


ゴールしたら、祐吾に告白ないといけなんだよ。


駄目だ。


「いいから。」


祐吾に引きずられるようにして、ゴールをめざした。


なんと、なんと、一位だ。


司会の人にマイクを向けられた。


告白しないと駄目ですか。


誰にすればいいの?


祐吾がマイクをつかんで叫んだ。


「好きだー。」


誰を好きなの?


司会者が私たちを見て、おめでとうございますと言った。


祐吾はマイクを司会者に返すと、私の腕をつかんで歩く。


祐吾は好きだと叫んだけど、誰が好きなのかは言わなかった。


ほたるが好きだと言ってほしかったのか。


自分に問いかけたけど、答えは出て来ない。


祐吾は好きだ。


でもそれは友達としてなんだと思う。


異性としてどうなのか、分からない。


祐吾が私を見て言った。


「今のは気にするな。競技上の事だからさ。本気の告白はこんな所で言わないよ。」


もう、なんなのよ。


私のドキドキ返してよって、本気の告白?


ちょっと待って、祐吾は私が好きって事ですか。

嘘、嘘だ。


あり得ません。


うん、私の勘違いにしておこう。












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