*武士の花*~花は桜木、人は武士~
幹部会議でなにがあったのか、永倉さんと
原田さんが離隊すると聞いた


一緒にいた渉は、ちっとも驚かない


土方さんと目が合った


多分、同じ事考えた


〝渉が仕組んだんだ〟って


事を荒立てすぐに離れる訳にも行かず

永倉さん達は、時期を見て、出るそうだ


松本先生が、新選組に顔を出すようになった

沖田さんの体調が、少し回復傾向だと
すごく喜んでいた

土方さんは、苦笑いで良かったと言った

苦笑いの意味は、わからなかったけど

俺は、なるべく土方さんの近くにいる

怪しまれないよう

土方さんを守る

渉と俺の約束


松本先生の口利きで、新入隊士が多数入った

その世話や、選別で忙しかった

そんな日

永倉さんと原田さんが、離隊する日が来た


渉は、俺の頼み通り、ぜんざいを作ってくれた

あの頃みたいに、皆がわいわいとぜんざいを取り合う

うまい うまい と口々に言う


渉は、永倉さんと原田さんの袖を握って

必死に泣かないように

「いってらっしゃい」

そう言った


永倉さんは、「飯食えよ!!」

原田さんは、「さみしいって、泣くな?」


渉をからかって、出て行った


ちょっと、行ってくる

みたいな、軽い口調でいつもみたいに

うるさかった



いなくなると、とてつもなく


静だ



渉の肩に土方さんがポンと手を置く


土「また、会えるさ」


その言葉に、渉が頷いて、笑う


渉は、もう会えないって、知ってる顔だった


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