*武士の花*~花は桜木、人は武士~
俺に驚き、涙を拭こうとする手をのけて
すっぽりと腕の中に、桜を抱き寄せた


「俺を選べって
俺が、助けてやるから
家元のとこになんか、行くな!!
桜…俺のところに来いよ!!」


何言ってんだって

自分でも、わかんねぇ

身請けなんて、無理だろうし

男に何言ってんだって

混乱しているけど







ひとつ、確かなことは

俺が




渉を





桜を









ひとりの人として







特別に意識している







ということ…








こんな感情は、江戸を出るときに
捨てたはずだった

近藤さんを助け、近藤さんの為に
新選組を大きくする


それだけが、俺にあり


他の事は、考えないようにしていた



なのに、どうしてだ?





今、桜のぬくもりにドキドキと胸が高鳴り

この手を放したくない





わかっている




桜は……渉は、男なんだって




でも、この感情が〝恋〟だということを
俺は気づいた





桜が、俺の胸を押し、離れようとする



その目から、大粒の涙が落ちていく



泣いている桜も綺麗で



俺は、吸い寄せられるように




口づけをした










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