幼なじみはアイドルの先輩
「ちょ……ゆかり?」


ひかるの戸惑いをよそに、玄関で私はひかるを抱きしめた。


「ひかるのバカ!バカ!」


一心不乱にひかるの背中を叩き続けた。


「……社先生から聞いたんだね。ごめんねゆかり」


ゆかりに頭を撫でられたら私はもう膝ガクガクになった。


「ゆかりの気持ちはすごくよくわかったけど、もう決めたことだから。来年春までこき使ってください」


私はそんなつもりで抱きしめたつもりじゃないのに。


ひかるの卒業なんて……卒業なんて……。


ひかるが私の頬から流れ落ちる汗を自分の紫色のハンカチを取り出して綺麗に拭いた。


「綺麗な顔が台無しになるよ。あたし帰るね」


ひかるは鍵を開けて出ていった。


私はその場に座り込んでしまった。


この抑えきれないひかるに対しての感情はなんなんだろう?


卒業に対して何も思ってないのに……。


「ひかるのばかあ!!」


思ってもないのに、ひかるの名前呼んで叫んでた。


せっかくひかるに綺麗にしてもらったのにまた台無しになっちゃった。


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