幼なじみはアイドルの先輩
「何か話でも来てるのか?」


「映画のオファーきてます。渋沢組です」


「渋沢監督か。なんで監督が娘知ってるんだ?」


海外で数々の作品を受賞させた渋沢組の映画出演競争率は気が遠くなるような高さを誇ってるはずだ。


「渋沢監督は朝必ず修さんのラジオ聴くんです。そこで、杏ちゃんが気になるようになって、本人にわからないようにお忍びで見学なさったようで。それで、一目惚れしたって」


やっかいな相手に目を付けられたなあ。


渋沢監督は怒鳴りはしないが、独自のこだわりが強いお方だ。


こだわりが強すぎていろいろ問題が発生して大変だという都市伝説が1人歩きしてるんだが。


「何のオファーなの?」


「それがですね、しゃべらない役なんです」


「しゃべらない?」


「はい。社長はゴーサイン出しましたが、後は社先生次第って」


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