二百文字小説【小さな玉手箱】
《19.路線バス》

 勤務中のタクシーの中で、終電の客を待ちながらラジオを聴く。

 聴取者の手紙を読みながら思い出の曲を流すという番組だ。

 昨日、妻に薦めると微笑み返すだけだった。

 帰りが遅いので息子はいつも熟睡だ。

 貧乏で大学に行けなかった俺は、せめて息子は大学に行かせてあげたい。

 頑張らなければ。

「お父さんありがとう。僕、勉強頑張るよ」

 不意にパーソナリティーが告げる息子の名前。

 俺の十八番だ。急に家族でカラオケに行きたくなった。
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