契約結婚の終わらせかた



「こいつ、警備室に連れていきましょう」

「わしは警察に連絡しておくわ」


警備員さん2人がそれぞれの仕事をしようとした時、いつの間にか目の前に見覚えがある人が立ってた。


「か、葛西さん!」

「や、お仕事ご苦労様。でも、なんで彼女を拘束する必要があるのかな?」


葛西さんは紫色のスーツにピンク色のシャツという派手な格好をしていたけど、にこやかな顔なのに。警備員さんに向ける笑みは背中がゾッと冷えそうなものだった。


「は、はい……この女が社長に届け物をと。身分証明書もないうえに、自分が社長と結婚している等と虚言を言ってまして」

「職務に忠実ですごく助かるよ、うん。君たちの頑張りでこの会社は今日も安全だけど。憶えておいてくれるかな?」


葛西さんはこちらへ歩み寄ると、私を拘束する腕をそっと外させる。


「伊織……社長は彼女と結婚してるよ。1ヶ月以上前にね。公表がされてないのは、やつのわがままなだけ。近いうちにきちんとした発表がプレス向けになされるから。とりあえず、彼女はちゃんと伊織の妻で社長夫人だから」


< 80 / 280 >

この作品をシェア

pagetop