いきなりプロポーズ!?
§9 戦闘開始?
 夕方までベッドで横になっていた。目をつむって寝ようとするけど、隣の存在が気になって眠れない。達哉の寝がえりを打つときの布団の擦れる音、時折聞こえる大きな寝息。今夜でこの男ともお別れだ。明日の早朝の便で日本にもどれば、もう会うこともないだろう。そう思うと一緒の空間にいる今がいとおしくてもったいなくて、寝ることなんてできなかった。

 19時になって階下のレストランで食事を取った。最後の晩餐、アラスカンディナーだ。用意されていたのは牛のステーキとホタテのグリル。控えめという言葉を知らない量に頑張って食べるけど胃がはちきれそうになってあきらめた。もちろん残した料理は達哉が平らげる。日本食が恋しい。早く帰りたいけど、帰りたくない。

 部屋にもどって支度をする。達哉がファスナーを上げてくれる。私の前でひざまずく彼に執事みたいというとバカという答えが返ってくる。こんな調子のいい会話も明日までだ。


「愛弓、先に行ってて。俺、トイレ入るの忘れてた。もう時間だし、神山さんが心配するといけないから」
「そうだね。先に行ってる」


 一緒に降りたかったけどそんな子どもみたいなことも言ってられない。私は先に部屋を出て、階下に向かった。ロビー階に到着してエレベーターの扉が開くと正面に神山さんの背中が見えた。彼の前には青いジャケットを着た客3人、レンタル防寒着ということはツアー客だろう。数歩近づいて様子をうかがう。どうやら例の女性3人ではないか。洋ナシ巨乳の茶髪A、ロリータの黒髪B、白い太腿の金髪Cである。空気感が半端無くおかしい。


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