いきなりプロポーズ!?
 少しだけ見えた神山さんの顔色は青白い。アニメで言うなら、ちびまるこちゃんによく出ててくる“額に縦線”状態だ。何かトラブルらしい。こういうときツアコンって大変だなって思う。旅はお金を掛けてするものだし、思い出に残るし、やり直しがきかない場合が多い。ことに今回は海外だし、アラスカくんだりまでリベンジする人は少ないだろう。私は聞き耳を立てた。


「ちょっと、そうなんでしょ」と真正面から迫るのは茶髪A。あれでは胸が神山さんの腕に当たらないから戦闘力はゼロに等しい。

「そうよ。同じ代金払ってるのにおかしいじゃない」と迫るのは黒髪B。フードをすっぽり被っていて黒髪は見えないからこれも戦闘力に乏しいと考えていい。

「なんであの二人がスイートであたしたちは狭いツインにエキストラベッドで苦しい思いしてんのさ」と迫るは金髪C。レンタル防寒着を着ているから当然ながら太腿はさらけ出せていない。これも戦闘力ゼロだ。よし! 貧乳でふつうの私にも勝ち目はあるかもしれない。自分に戦闘力がなくてもアイテムで相手の能力を低くさせているのと同じだ。相対的に私の能力が高まることになる。

 いや待て。相手は神山さんだし、神山さんとこの3人の誰かが恋人になるのはいいことだ。そのまえに聞き捨てならないワードがあったような……?

 集合時間直前なだけにロビーにはツアー客もわんさかいた。3人のただならぬオーラとキンキン声に皆が注目し、あたりは人だかりも出来始めていた。この3人をちびまる子ちゃんでたとえるなら、まるこがバカな真似をして母親の逆鱗に触れ、鬼のような形相の母親の後ろで富士山のような高い山が爆発をしている場面。

 金髪Cが私がロビーにいるのを見つけて あ!と大声を上げた。すると、ちょちょちょー!とジャッキーチェン並みの奇声を茶髪Aが発した。その間にずかずかと私の前にやって来たのはフードで自らの戦闘能力を激減させている黒髪Bだ。

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