いきなりプロポーズ!?
「そんなのしてほしくない。達哉だって私には興味ないでしょ!」
「ああ。貧乳のチンチクリンだし、へそ曲がりだし、トロいし、白人にナンパされて連れ込まれそうになってもヘラヘラしてるし!」
「あれは分からなかったんだもん、しょうがないじゃない」
「なんだよ。ちょっとからかっただけなのによ」
「冗談は顔だけにして」
「ったく。ホントに可愛くねー!」
「ふん!」
「こっちこそ願い下げ」
達哉はプイと向こうを向いてしまった。その視線の先には女性グループ。一人が気づいて達哉に手を振った。達哉も手を上げてそれに応える。なんだか達哉が本当にあっちにいってしまいそうで怖かった。
午前2時になってオーロラツアーは撤収になった。バスでホテルに戻る。もちろん車内でも達哉とは口を利かない。バスを降りるとロビーでは青いスタジャンを着た神田さんが出迎えてくれた。帰還した皆ひとりひとりにお疲れさまでした!と笑顔で挨拶している。仕事とはいえ、こんな夜中まで大変だと思う。
「新條様真田様もお疲れさまでした。オーロラは見えましたか?」
「はい! すごくきれいでした」
「そうでしたか、それは何よりです」
私が神山さんとたわいもない会話をしていると達哉はぷいと体の向きを変え、フロントに向いた。そして部屋のカギをもらいにカウンターへ歩き出した。私は神山さんとふたりになる。神山さんは後ろを振り返り、達哉が近くにいないことを確認した。
「あの?」
「真田様、このたびは本当に申し訳ございません、もうお詫びのしようもなく」
「いえ。スイートにも泊まれたし、まあ、あれですけど」