いきなりプロポーズ!?

 シャワーを浴びて部屋に戻ると、オーロラのイラストが描かれた瓶ビールがテーブルの上で横たわっていた。空だったからこぼれてはいなかったけど、一気に飲み干して酔いがまわったんだろうか。そっと寝室をのぞく。達哉はこちらを背にして横向きに寝ていた。今夜はちゃんと布団を被っている。


「達哉……」


 小さく声をかけるけど反応はない。スースーと寝息に合わせて上側に向いた肩がゆっくりと上下しているだけ。私はそっとベッドに近づいた。自分のベッド側に回り込んで腰を下ろす。目をつむって気持ちよさそうだ。

 明日はツアー3日目。もう折り返し地点だ。あと2泊してその翌朝にはフェアバンクスを発つ。たった2日でこの人を好きになってしまった。最初はルックスが松田さんに似てるから惹かれたけど、今は違う。達哉が好き……口の悪いところも横柄な態度もひっくるめて可愛いと思う。そして優しいところも。達哉だから、いい。


「あ、あと背も高いし肩幅もあるし。体力も無駄にありそう。なんちゃって」
「ん……」


 マズい! 聞かれた!?

 私は慌てて両手のひらで自分の口を押さえた。背筋が凍る。私は立ち上がり、達哉のベッドに近づいた。そっと顔を近づけて達哉の顔をのぞく。

 と、そのとき達哉は動いた!


「ぎゃっ☆*□★※・▼§☆!!!」
「ん……む……」


 達哉は寝返りを打ち、ごろりと私に背中を向けた。そして再びいびきに近い寝息を立てた。今のは寝言らしい。聞かれてなかったことに安堵してほっと胸をなでおろした。背が高いならまだしもいい体なんて聞かれたら大変だ。達哉の大きな肩がはだけてむき出しになっている。トランクス一枚で寝てしまったのか、私は掛け布団の縁をそっとつまみ、達哉の顔のほうに引き上げた。


「おやすみ、達哉……」


 私も自分のベッドにもぐり、目を閉じた。






   

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