いきなりプロポーズ!?


 達哉はぷいと向こうをむいて歩き始めた。カギが鳴らすじゃらじゃらという冷たい金属音だけが耳につく。部屋の前に到着するとカギを開け、達哉はズカズカと中に入る。カウンターの脇を抜けて中央のリビングで立ち止まった。


「俺もう寝るわ。襲わないからお前はシャワー浴びてろ」


 低い声で怒ったように吐くと達哉はジャケットを脱いでソファに投げ、オーバーオールの肩ベルトを下ろした。黒いズボンがストンと落ちるとそれを跨ぐように脱いだ。


「何見てんだよ、痴女。疲れてんだろ、早く風呂入れよ」
「言われなくても入るから」
「あ、疲れてもねえか。男に誘われて喜んでたもんな」
「喜んでなんか……」
「なんだよ、マカロンだのシャンパンだのって尻尾振ってよ」


 達哉はセーターとシャツを豪快に脱いた。白い肌着もシャツにつられて一緒に脱げた。ジーンズのベルトのバックルに指を掛ける。達哉のトランクスがちらりと見えて、私は慌てて回れ右をした。逃げ込むように脱衣所に掛け込んだ。

 私もレンタル防寒着を脱いだ。服も脱いだ。脱衣所のドアを少しだけ開けて部屋の様子をうかがう。トランクス1枚でミニキッチンの冷蔵庫を開けている達哉が見えた。屈んでビールを取り出している。筋肉質な体、大きな肩が丸出しの姿にどきりとしてしまった。私はそっと扉を閉めて浴室に入った。


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