最初で最後の嘘
でも、俺にはそんなことはできない。
幼い頃、慕っていた思いは憎しみが渦巻く中でも消えないのだ。
憎しみの渦で覆い尽くされてしまえば、楽なはずなのに。
一欠片の思いが、俺をこんなにも不愉快にさせる。
「歩が瑞希のことが好きなことなんて、みんなが知ってた。小さい頃からずっと好きだったことなんて知ってた。だから、お前の行き過ぎた癇癪も強く注意できなかったんだ」
そう言って、俺の腕を引き剥がし、ふっと息を吸い込んだ。
「俺は……」
あんなやつ好きじゃない。
そう言おうとしたのに何故だか言えなかった。
今さら、取り繕っても仕方ないから?
いや。
俺は瑞希への思いを隠すことなんてできていなかった。
今も昔も。
気付いていなかったのは俺と瑞希くらいだ。