Chat Noir -バイオハザー度Max-
私は黒猫の真剣な顔を見上げて目をまばたいた。
黒猫は私の腕からゆっくり手を離すと、
「せっかく来てくれたんだから、ケーキ食ってけよ。コーヒー淹れ直す」
黒猫はぶっきらぼうに言って、私はその有無を言わさない問いかけに無言で頷くしかなかった。
――――
――
「またアサコちゃんに会えて嬉し~よ♪ちょうどテスト前だし?アサコちゃん数学教えて~」
私の向かい側でトラネコリョウタくんがケーキを口に入れて、その甘そうなケーキと同じような甘い笑顔。
アサコじゃありません。アサトです。…って、もう訂正するのも面倒だ。
「数学?分かるところなら…」
と答えると、
「誰がお前に教えるかっつうの。朝都だって慈善事業で来てんじゃねーよ」
今日は完全なる慈善事業だけどね…
私の隣で黒猫が不機嫌そうカフェオレのマグカップに口を付けている。
その向かい側にはカリンちゃん。
い、嫌な図だわ…
昨夜のみけネコお父様との食事会よりもっと。
でも
「え~ケチ~」とトラネコリョウタくんは冷たい黒猫の態度をまるきり気にしてない。
慣れていそうだ。
「朝都の授業は俺だけだっつうの」と隣で黒猫がぼそり。
わっ!わわっ
黒猫の独り言はカリンちゃんもトラネコリョウタくんも聞こえていなかったみたいで、二人は今テスト範囲について話題を繰り広げている。
そのカリンちゃんの横顔はどこか顔色が悪かった。
単に黒猫にくっついてる私の存在が疎ましいだけかと思ってけど、それだけじゃなさそう。
「…あの、カリンちゃん。さっき病院って言ってたけど…どこか悪いの?大丈夫?」
思い切って聞いてみると、
「…小さい頃から小児喘息で…今日は定期健診だったんです…」とカリンちゃんは素直に答えてくれた。
素直な子だな。
黒猫に片想いしてるはずだろうに、
私は彼女にとってさぞや鬱陶しい女であるはずだろうに。
「あんま無理すんなよ」
当の本人これっぽっちも気付いてなさそうだしな。