EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【静理編】

「なら、私が!私が、甘やかします!」

「えっ」

「静理さんが甘えるんじゃなくて、私が勝手に甘やかします。全力で静理さんのこと、甘やかしてみたいです」

「それって、そんなに意気込むことかい?」

「ダメ、ですか……?」

不安そうな眼差しを向けられ、静理は考える。


(俺に優しくしたところで、小鳥ちゃんには何もメリットがないはず)


だからこそ、悪意もない。

それならば。

「君になら……少しくらいなら、ありかもしれない」

他人に気を許さず生きることが普通。

弱さを見せることなんて命取り。

それが人間相手なら尚の事。

そのはずだ。

けれど、小鳥は静理にとって今のところ唯一妥協できる相手である。

少しくらいなら、と思わせられた。


(小鳥ちゃんと過ごしていると、今までの俺が少しずつ崩れていく)


崩れゆくものは何だろう。

それが全て無くなった時、自分は何を思うのか。


(なぜだろう。怖いくせに、期待する自分もいるなんて……可笑しな話だ)


自嘲しながら小鳥から小ビンを受け取る。

今この場で飲むことに小鳥が何やら慌てているが、自分の気が変わる前に静理は液体を飲み干した。



< 87 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop