EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【白魔編】
「ちょっと、もう櫻井じゃないよ。小鳥・クラヴィエ。彼女は僕と結婚したんだから」
「は…?」
「……何?その失礼な表情は。まるで僕が一生結婚できない男だと思ってたような目をしてるね」
「いや……こんな男を選ぶ櫻井小鳥の神経を疑ってしまっただけだ。他意はない」
「うわっ、サラッと貶してくれたね。僕のプリマドンナを」
ナイフを構えようか悩んでいると、氷河がハァと憂鬱げな溜息をついた。
「結婚、か…。俺はいつになることやら…」
「何嘆いているのさ。君にだってフィアンセいるんでしょ?」
「そうだが…月那は闇人になってしまった。俺と結婚しても、子供ができることはない」
闇人同士が交わっても新たな命は生まれない。
自分達だけでは命を生み出せないこと、それは闇人にとって宿命のようであり罰のようでもある。
「子供欲しいの?」
「俺ではなく、月那がな。この前…聞いてしまったんだ。子供が欲しいとぼやく、あいつの声を」
普段、他人に自身の悩みなど愚痴らない氷河だが、珍しく彼は胸の内を吐き出した。
「あいつの願いを叶えてやりたいが、俺以外の男…しかも人間に月那を抱かせるなんて、コキュートスに落とされようとも許せないんだ…!」