EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ【ルカ編】

「おい、月那。野薔薇はどうした?」

ギクリ。

月那が笑顔を引きつらせる。

「えっと、野薔薇ちゃんは、ですね……。お、怒らないでくださいね……?」

取り敢えず念を押してから、月那は白状した。

「“カロンさまのライブが始まるので抜けますわ!”……って言って、ルンルンしながら行っちゃいました」

聞いた瞬間、ビキッと、氷河の額に青筋が走る。

「あいつめ!何のためにわざわざ店をやってると思ってるんだ、協調性の欠片もない!月那!野薔薇を甘やかすな。今度は鎖で縛って動きを封じろ。俺が許可する」

「うぅ……許可が出ちゃったよぉ……ごめんね野薔薇ちゃん」

今度は見逃せない。

月那がここにはいない野薔薇に独り言で謝っていると、氷河が突然話題を変えた。

「ところで月那、一人で大丈夫だったか?頭の緩い男共に話し掛けられたりしなかっただろうな?」

「頭が緩いかはわかりませんが、何人かの男の人に声は掛けられましたよ。一緒に遊ばないかって」

「ほう……」

氷河が静かな怒りを孕んだ低い声を出す。

彼は腰に下げていた日本刀に手を掛け、チャキリと鳴らした。

< 200 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop