ある王国の物語。『白銀の騎士と王女 』

48話、エルティーナの初めての恋


 ラズラとエルティーナは、シルクの布団に仲良く入る。そしてお互い何も言わず手を繋ぐ。

「ラズラ様、始めますね」
「よろしくお願いするわ」


「…少女の年齢は八歳にやっとなった所くらいでした」

 王宮には隠し通路があって。それは王宮中に広がっています。八歳になる頃はその隠し通路が楽しすぎて、乳母や侍女をまいて一人で勝手に隠れんぼしていました。

 とても扱いにくい少女だったと思います。でも好奇心は止められなくて……。最後は お母様やお兄様に見つかって怒られる。でも、また同じ事をする阿保でした。

「ブハァッ。ご、ごめんなさい。貴女の言い方が面白すぎて…」

「いいえ。笑える所は笑ってください。嬉しいですからっ!!」


 その少女は、あまりにも毎日見つかってしまい面白くなくて…。なんと脱走をはかるんです!! 守られた大きな安全な場所から…。
 一つでも間違えたら、生きて戻れる保証はなかったのに……。

 午前の授業が終わり、御飯を食べている時に今にも寝てしまいそうな演技をいたしました。可愛らしく見えるように、舟をこいでみたりして、なかなかの演技だったと思います。
 その少女は、自分がこの世で一番可愛いと思っていました。城に住む皆が…お世辞だったと思いますが、可愛い、天使、美しい、そう言う台詞を毎日のように聞いていましたから。

 惚れ惚れする美しいお兄様を見て「私はこんな素敵なお兄様の妹よ」と自慢に思っていました。お兄様が綺麗だからといって、私が綺麗とは限らないと分からなかった。

 食事が終わり。寝たふりをしていた私は、侍女に抱き上げられ、寝室に連れて行かれました。
 私は寝ていなかった…だから、しっかりと侍女の会話を聞いてしまいました。


「姫様は、可愛らしいけど、残念よね…。王子様とはあまりにも違いすぎて。まだお小さい年齢のはずなのに発育ばかりよくって。頭が悪そうだわ、いつも悪戯ばかりだし。抱き上げるのも腰にくるわ。次は変わって」

 そう、話していました。ベッドの中で、小さくなり、泣きました。まさか、そんな風に思われていたと思わなくて…。

 侍女が部屋から出てすぐ、起きました。この場に居たくなくて、一刻も早く離れたくて。外履用に履き替え、隠し通路からその部屋を後にしました。

 王宮内に出ては捕まるから。だったら外へ行こうと思いついて、絶対に行ってはいけないと強く約束させられた。外への隠し通路を進みました。
 八歳の少女が隠し通路全てをしっかり覚えていたわけはありません。だから、迷ったのです。歩いて歩いて疲れました。明るい方向を目指し歩いていたら、やっと外に出られました。

 当たり前ですが、外には沢山の衛兵がいて……。これではすぐ見つかると思い。近くにあった、野菜などが沢山のっていた比較的綺麗な馬車の中に入りました。中に入ったら、眠くなってきてそのまま眠りにつきました。


「エルティーナは、なかなかチャレンジャーね。…それで…よく生きて帰ってこれたわね」

「ふふふ。ラズラ様。私、運命ってあると思います。絶対にあります。
 少女は……私は、これから運命の出会いを果たします。誰にも話した事はございません。お父様にもお母様にもお兄様にも…アレンにも…皆、知りません。
 ……今のきっかけ。何か一つでも欠けていたら、私は、彼に出会えなかった…」

 ラズラの瞳が軽く見開かれれる。そんなラズラを見てエルティーナは、また話し始める。



 私は、野菜の沢山入った荷車で心地よく寝ていました。しばらくして、暗かった荷台が明るくなりました。明るい先には若い男女がいて「ぼぅ〜」としていたら。若い男性と女性の悲鳴声が辺りに響き、私はしっかりと目を覚ましました。

 化け物を見たような声は、はっきりいって失礼だと思いました。私は先ほど王宮で、侍女に大したことない姫だと言われたばかりだったので、かなり頭にきていて、怒ってました。
 走ってくる足音が聞こえて、荷台に集っていた人達が一斉に両端に移動しました。私も王女の端くれ、この荷台の持ち主がやって来るのだと分かり一言文句を言ってやろうと思い、荷台から見える景色を睨んでました。

 顔をみせたのは、私の知っている人物でした。


「…エルティーナ様? 何故ここに…??」

「……メルタージュ侯爵???」

 私が乗ってきた荷車はメルタージュ侯爵家のものだったのです。


「…エルティーナは、強運の持ち主ね。分かったわ。そこでアレン様と出会うのね」

「ええ。そう…私は、ここで初めてアレンと出会います。ラズラ様…これからお話する事は絶対に、誰にも言わないでください。ラズラ様が大事な秘密を教えてくれたから、私もお話しようと思います」

「もちろん。誓うわ。聞きたいから。貴女の大切な秘密を…」

 ふふっ。エルティーナは微笑みながら、身体を真上に向けた。少し顔を赤くして。

「会ったことを思い出して、何故顔が赤くなるの?」

 ラズラは、赤く色づくエルティーナの顔をしげしげと見つめてから、自身も身体を真上に戻した。


 私はメルタージュ侯爵に連れられて、メルタージュ侯爵家の中に入りました。何人かの侍女が絶叫していたので「これはヤバイ」なかなかに怒られる未来を想像して嫌になったのをよく、覚えています。

 メルタージュ侯爵が私に、微笑みかけてきた。

「まさか、王宮から抜け出して来られるなんて…エルティーナ様はお転婆ですね。でも…私で良かったです。姫様、五体満足で帰れなかったかもしれないのは分かりますか? 姫様を人質に悪さをする事もありえたのです。王や王妃、レオン殿下にも、迷惑がかかったかもしれないのですよ」

 メルタージュ侯爵の言葉は恐かった。授業で習った事、何度も注意を受けた事、紙の上での事ではなくなる恐さをあの時理解しました。

 メルタージュ家の侍女に案内されて、綺麗な部屋に入りました。そこで待つように言われ、言う通りに待ってました。
 待ってましたが暇で暇で、室内を歩いていると、隠し通路を発見してしまい…。嬉しくなって入って行きました。



「それはないわね。私とエルティーナの違う所ね。私は絶対に言われた部屋から出なかったわよ!」

「ごめんなさい」

「今、謝られても…。でも、今のエルティーナからは想像出来ないわ」

「………ここからはさらに黒歴史なんです」

「これ以上、何があるのよ。十分やらかしているわよ。人様のお屋敷の隠し通路通るお姫様がいるなんて……脱帽ものよ」

「………でも、隠し通路を通ったから…アレンと会えたんです……」
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