彼に惚れてはいけません

「吉野さんに、言われたんです。大切な人が出来たから、個人的に会うことはできないって」


私と結ばれて、決心してくれたのか・・・・・・

ちゃんと伝えてくれていたなんて。


「あなたがうちの会社に来た日に言われたんです」

驚いた。

そんな前に、吉野さんは伝えてくれていたなんて。

「あの日、岡田社長との会食の場所をどこだろうどこだろうって言ってる姿見て・・・・・・相手はあなたなんだろうなと思いました。私、吉野さんがいないとだめなんです」

想像はしていた。

弥生さんが吉野さんを好きなんだろうなってこと。

わかってたけど、目の前でこう言われると、私は何も言い返すことができなかった。


時計を見る。

「あまり時間がないので、ゆっくり話せませんが、終わってからなら大丈夫です」

「それなら、終わったら連絡もらえますか」


弥生さんは、紙に自分の連絡先を書き、私の為にエレベーターのボタンを押した。


「それでは後ほど」


エレベーターの中でひとりになった瞬間に、不安の涙が溢れる。

どうしよう。

弥生さんのまっすぐな目を見て、私は何も言えない。

それに、私達が話し合ったところで、何も変わらないし、吉野さんの決めること。


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