彼に惚れてはいけません

愛の軌跡

―愛の軌跡―


日本に戻り、今日から日常が始まる。

たまった仕事を片付けるため、いつもより1時間早く家を出る。

まだ夢の中にいるような気分だった。

最終日は、モンマルトルの丘にのぼり、そこでいろんな話をした。

階段に腰掛けて、街並みを見下ろしながら、キスをした。

絵描きさんに描いてもらった似顔絵がおもしろすぎてふたりで爆笑したんだよね。

フランスの絵描きさんが描いた吉野さんは、ヨーロピアンな顔立ちで、どこから見ても日本人に見えなかった。

それなのに、私はというと、日本人形みたいな似顔絵でさ。

もう少しかわいいのにね、と吉野さんは笑ってたね。


フランス旅行の、最後の最後に・・・・・・とても嬉しい出来事があった。

吉野さんが、路地裏のマカロン屋さんを探してくれて、飛行機の時間ギリギリでマカロンにめぐり合うことができた。

全部の色を買って、飛行機の中で堪能した。

“次は老後までフランスなんて行けないからな”とそっけなくマカロン屋を探してくれた吉野さんだけど、知ってるよ。

ホテルのフロントで、マカロン屋さんがないか聞いてくれたり、私のために頑張ってくれたんだよね。


日本に帰り、フワフワした気持ちが続く。

時差ボケだと吉野さんは言うけど、私は吉野さんを好きになりすぎたせいだと思ってる。



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