彼に惚れてはいけません

吉野さんのオフィスのあるビルには4つの会社が入っていて、吉野さんの会社はその中でも一番大きくて、6階と7階にあった。

会社での吉野さんを想像してみる。

結構役職は上の方だろう。

部下にも気さくに声をかける優しい上司なんだろうな、などと想像しながらエレベーターに乗っていると、間違えて6階で降りてしまった。

本当は3階にあるインテリアの会社に飛び込む予定だったのに。
空間演出という会社概要を見て、これはイケる!と思っていた会社。

しかし、今私がいるのは・・・・・・吉野さんの働くIT関係の会社。
ガラス張りのオフィスの中をチラリと覗くと、入口近くにいた事務員であろう女性が立ち上がって私に頭を下げた。

エレベーター間違って降りただけとは言えない状況になり、私は手に持っていた空気清浄機のパンフレットを彼女に渡し、すぐに帰ろうと思った。

「こちら、責任者の方にお渡し頂ければ幸いです」

何人かの社員さんが私を見ていることに気付き、私はうつむいて後ずさり。

吉野さんがこの中にいるかもしれない。
そう思うと、バレないように消えたかった。

吉野さんを追って、会社まで見に来た痛い女だと思われたくないもの。

私はパリジェンヌのようにしなやかな女性になりたいのだ。


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