彼に惚れてはいけません

再会は運命的に

-再会は運命的に-

YOSHINOさんのことを考えない日はなかった。

彼の娘さんの存在を信じている私は、大事なボールペンを早く彼に返してあげたかった。

あれから、1週間以上が過ぎ、私は毎日あのカフェで朝を過ごしている。

彼は、もしかしたらもうこの店に現れないかもしれない。
出張か何かでたまたま東京に来ただけなのかもしれない。

店員さんに渡すべきだった。

今からでも遅くはないから、店員さんに託そうか、とボールペンに手を伸ばす。

鞄の中には、ハンカチにくるまれたボールペンがものすごい存在感を示している。


たった一度会っただけの人。

よだれを垂らすような人なのに、どうしてこんなにも気になるんだろう。

最後の優しい笑顔と、このボールペンのせいだ。


< 8 / 180 >

この作品をシェア

pagetop