彼に惚れてはいけません

8時半に店を出て、いつものように会社へ向かう。

私は、朝から夕方まで仕事用のパンフレットを手に持ち、今日も企業への飛び込み営業。
4月から6月頃までは新規開拓の為、毎年こんな感じ。

遅めのランチを終え、また営業回りの為にブラブラと歩き出す。

「わぁ、ここ素敵」

ひとりで営業回りをしているうちに、堂々と独り言を言うようになった。

この都会の雑踏の中で、私が結構大きな独り言を言っても誰も気にも留めない。

「ちょっと見てみようっと」

元銀行だった建物は、外観だけヨーロピアン風に変え、1階がレストランとカフェになっていた。

2階から上はオフィスが入っていて、そこは営業回りのリストには入っていない会社だったけど興味本位で覗いてみようと思った。

幻想的な雰囲気で、パリに憧れる独身彼氏なし女には、たまらない空間だった。

まずは、1階のカフェで休憩しよう。

午後2時、ちょうどカフェイン切れで、コーヒーを欲していたところだった。
混みあった店内には、スーツを着た男性がほとんどで、数人のOLがぺちゃくちゃと話していた。

< 9 / 180 >

この作品をシェア

pagetop