御曹司さまの言いなりなんてっ!

 ひとしきり私達の笑い声が室内に響いた後、部長がポツリと呟く。

「また、お祖父様に救ってもらったなあ……」

 しみじみとした口調には、祖父への深い感謝が感じられた。


「本当にお祖父様には、感謝しているんだ。俺が高校生の時に亡くなった母方の祖父母を思い出すよ」

「どんな方達だったんですか?」

「田舎じゃ、なかなかの名士だったんだ。ところが3代目を継いだ息子……つまり俺の叔父が問題児でね。さんざん好き勝手やったあげく、財産ぜんぶ食い潰した」


 うわ、典型的な3代目バカボンボンだったわけか。

 そんな人ばかりでは無いだろうに、どうして私の周りには不出来な3代目ばかりが集中するのかしら。

 これで専務が後継ぎに決定したら、本当に変なジンクスが確定してしまう。


「母方の祖父母も、お祖父様も、牧村も、みんな俺にとって特別な存在だ。……もちろんお前も」


 部長が優しい目をして言ってくれた不意打ち攻撃に、私の胸がまたトクンと切ない音をたてる。

 “特別な存在”という言葉が、私にとっては軽く聞き流せないほど深い響きを持って耳に響いた。


 だから、探るような目で部長を見つめてしまう。

 この人はどういうつもりで言ってるんだろうか。ほんの社交辞令?

 それとも私が受け止めたのと同じくらい、深い意味で言ってくれているんだろうかと。

 
「お前は……そうだな。イヴだ。この世界で特別な、唯一の女さ」


 私の心臓がドクンと波打ち、わずか一瞬で顔が真っ赤に火照ってしまった。
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