御曹司さまの言いなりなんてっ!

 衣装もヘアメイクも万端整った私を、お店の人たち全員が晴れやかな笑顔で褒め称えてくれる。


「お嬢様、お似合いです」

「さすがは、一之瀬様がお連れになったお嬢様ですね。とても素晴らしいですわ」


 ヤンヤと持ち上げられて、恥ずかしいやら照れくさいやら。

 ああ、完璧にお世辞と分かっていても、どうして女ってこの手の賞賛に弱いのかしら。

 必死に口元を引き締めても、顔が喜びに緩んでしまうのを止められない。


「本当に素敵だわあ。でもね、一之瀬様。せっかくのパーティーなんですから、もうちょっとお嬢さんのメイクを華やかに……」

「いや、いらない。これ以上は蛇足だ」

「そ、そうですかあ?」


 バッサリ切って捨てられ、マモルさんはガクッと意気消沈した。

 部長は真面目な顔で、私を頭のてっぺんから足の爪先までジロジロと見つめている。

 こうなるとつい反発したくなるのが、意地っぱりな私の悪いクセ。

 なんだかアラ探しされてるような気がするんだけど。

 あたしは八百屋の店先に並んでる野菜じゃないわよ。

 キツイ目付きで部長を見返していると、そんな私を見た部長の表情が不意に変わった。


「……とても、似合っているよ」

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