御曹司さまの言いなりなんてっ!
「で、どうなの? 成実の仕事は順調?」
「順調も何も、まだ全然プロジェクトには関わっていないの。今は勉強段階で資料と睨めっこばかりよ」
「じゃあ毎日デスクで勉強三昧? まるで受験生ね」
「あとは、牧村さんのお手伝いとかね。秘書見習いというか、新人研修みたいなことしてる」
「牧村さんかあ……。あの人、カッコイイよねぇ……」
瑞穂がホウレン草のお浸しを箸でつまみながら、デレッと顔を緩ませた。
言われてみれば牧村さんって知性的なイケメンだから、瑞穂の好みにどストライクだ。
「確かに牧村さんって、瑞穂好みの“デキる男”ってイメージだもんね」
「イメージだけじゃないわよ。実際デキる男なのよ牧村さんは!」
瑞穂が目を輝かせて、食事そっちのけで力説し始めた。
「総務にいるとさ、情報収集には不自由しないわけよ。で、聞いたところによると牧村さんてさ、本当は秘書じゃなかったんだって」
「え? そうなの?」
「全然畑違いの部署にいた、あまり目立たない営業だったらしいの。なのに一之瀬部長が入社した時、いきなり秘書の辞令が下ったんだって」
瑞穂はチラチラッと周囲に視線を走らせ、グッと顔を寄せてきて声を潜める。
「裏から社長夫人の妨害工作が回ったみたい。入社したばかりの部長に、役に立たない秘書をつけて足を引っ張らせようって魂胆だったのよ」
「ああ……。それくらいなら普通にやるわ。あの人なら」
「ところがさ、想定外に牧村さんには秘書の適性があったみたいなの。メキメキ頭角を現して、足を引っ張るどころか見事に戦力になってるんだって! ザマァって感じよね!」