ねがい
先輩の先輩が自殺したって例もあるし、ただの夢だと言ってしまうにはあまりにも生々しかったから。


「熱が出て寝込んでる間にね、他にも夢を見たの。ずっと昔に、この学校で起こった殺人事件をね。この学校の卒業生だったお父さんも知らない内容を」


幸村さんと馬場君の微笑ましい光景。


それだけで終われば良かったのに、まさか幸村さんが死ぬ所まで見てしまうなんて。


「俺は見てないから分からないけど、森川さんがそう言うなら信じるよ。国道で車に轢かれるって言うなら、国道に近付かなきゃ良いんだよ。特に、歩道橋がある場所にはね」


それだけで本当に大丈夫かな?


自分が死ぬかもしれないと思って、弱気になってるのかな?


彩乃を助けようとしていた時の、何としてでもというような強い気持ちはない。


漠然とした恐怖が、心の下の方でくすぶっている感覚。


「今日さ、彩乃の所に行くよね?」


儀式に失敗してしまったけど、知りたい事は変わらない。


彩乃は何を失ったのか。


ここで話をしていても、全くと言って良いほど分からないのだから、本人から聞くしかない。


「うん、行こうか。……って、もう時間だ。先生の所に行かなきゃ」


話の途中だけど、日直の南部君は溜め息をついた。
< 225 / 265 >

この作品をシェア

pagetop