ねがい
戸惑う私の表情を、メガネを掛けていない彩乃が分かるとは思えない。


だけど、フンッと鼻で笑って、さらに話を続けたのだ。


「前に私に自慢してたよね?毎晩南部君が電話をしてくるって。私が南部君を好きだって知っていて、わざと自慢してたんでしょ!?」


初めて語られる彩乃の想いに、私は何て答えれば良いの?


「そ、そんな事……私は知らなかったよ……」


一度も南部君が好きだったなんて聞いた事もないし、彩乃に話した時は、南部君が気になっていたわけじゃないから。


「南部君がメガネを外したら可愛いって言ってくれたから願い事を叶えたのに、まだ私を見てくれなくてさ!二回目の願い事で菜々よりも可愛くなれば見てくれるかなって思ったのに!私が入院してる間に、仲良くなっちゃってさ!!」


言っている内に、感情がたかぶってしまったのか、ドンッとベッドを殴り付けた。


それに驚き、ビクッと身体を震わせた私に、さらに彩乃は続けた。


「私は南部君が好きだから頑張ったのに!何で菜々なのよ!何で視力まで元に戻たのよ!これじゃあ、何の意味もなかったって事じゃない!!前より悪くなってるじゃない!!」


この時私は、夢の中の彩乃と、今の彩乃がダブって見えて、凄まじい不安に包まれていた。
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