すでに恋は始まっていた
「な、なんだこれは⁉︎」


焦った霧谷の声。


いつの間にか私の首元からはナイフが消えていて、私を固定する腕も無くなっていた。


霧谷の方を振り向くと…


「こ、これ…なんなの…」


そこには太いツルに絡まれて身動きがとれない霧谷。


ツルはグラウンドの地面から伸びていた。


(こんなものなかったはず…。それにグラウンドからツルが出てくるわけがない…)


「いったいどうして…」


その時私は疾斗の行動を思い出した。


(あの時…疾斗が手を動かしてからこのツルが現れた…っていうことは!)


私は疾斗の方を振り向く。


そこには少し悲しそうに笑っている疾斗。


「これ…疾斗がしたの?」


「ああ」


(疾斗にこんなことができたなんて…)

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