すでに恋は始まっていた
向こうから人が歩いてくる。


(あれは…)


「カーネーション君!…じゃなくて、樹君だったね」


小さい頃の樹君は私にどんどん近づいてきた。


「私、やっとあなたを見つけられた!といっても、気づいてくれたのは樹君の方だけど」


樹君はどんどん近づいきて、何も言わずに私の手を握った。


「樹君?」


「早く。早く僕を見つけて」


「え?だってもう見つけたじゃない…」


私に構わず、たったその一言だけを残して離れていった。


(どういうことなの?)

< 285 / 363 >

この作品をシェア

pagetop