思いは記念日にのせて
8.意外な結末

第三十三話


 その数日後。
 会社に着いて携帯を確認すると、貴文さんからメールが入っていた。
 ひさしぶりの貴文さんの名前表示に喜びよりも驚きが勝って、すぐにそのメールを開いて確認した。

 『いきなりでごめん。昼休みに会いたいんだけど時間は取れる?』

 たった一文のメール。
 きっと忙しい中、送ってくれたんだろう。
 大丈夫と返信すると、海外事業部の会議室に十二時という連絡が来た。

 前に海外事業部の社員にインタビューに行った時、入口の一番近いところに座っていた女性社員の野島さんが怖かったイメージがあるんだよね。
 インタビューをする社員を呼んでもらおうと思ったら強い視線で睨みつけられたのをよく覚えている。
 あのあと他部署に行くのがちょっと怖くなった。いわゆる軽いトラウマみたいな。今回も会議室に入るのなら、あの人に声をかけないといけないのかな……いやだな。


 昼休みになって席を立つと、朝から会議で席を外していた片山課長に呼び止められた。
 聞けば片山課長も貴文さんに呼び出され、海外事業部に行くことになっているとのことでびっくり。
 片山課長も呼び出しているということはやっぱり脅迫文のことだろう。
 昼休みはなくなりそうだから貴文さんの話が終わった後に食事時間を個別に取っていいと課長直々の許可をもらえてほっとする。昼ご飯を食べないで十七時まで仕事できる気がしなかったから。


 海外事業部について一瞬足を止めるわたしを見て、片山課長が苦笑いをした。
 前にあったことを話していたからわたしが海外事業部を苦手としているのを知っているのだ。

「ボクが先行くから」

 そう言って片山課長が先に入ってくれた。
 ほっとして後についていくと、野島さんは席にいなかった。昼休みだし席を外している確率は高いのか。なんだか軽く力が抜けた。
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