思いは記念日にのせて

「え、俺『ら』ってどういうことですか?」
「俺と出水ちゃん。近所のオムライス屋が今日まで値下がりしてるから食べに行く約束してたの」
「えー私も行きたいけど鈴木町じゃあな」
「だよな。自分も逆方向だ。高部もだろ?」
「と、いうことで三人で仲良く飲みに行ってきなさい」

 夢幻亭、値下がりしてたんだ。知らなかった。
 だから誘われたのかな? でも気兼ねなく誘うって言ってくれたし。

「霜田さん絶対千晴狙いだよね」

 小さな声で美花さんが茅野くんに言ったのが聞こえてしまった。
 茅野くんもうなずいて同調している。高部くんと話している霜田さんには聞こえてないと思うけどなんてこと言うのよ。本人がそばにいるのに。

「エリートゲットできそうじゃない、千晴やるーぅ」
「そんなんじゃないよ」
 
 人差し指で唇を押さえて「しっ」て窘めるけど、ふたりはエキサイトしちゃってるのか小声で話し続けている。

「霜田さんくらいのエリートなら専業主婦でもいいんじゃない?」
「だよな、転勤ありそうだけど。しかも海外に」

 本人除外で盛り上がらないでほしい。
 しかも霜田さんに聞かれたらどうしよう。こんなこと言われてるって知ったらいやな思いさせちゃう。
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