思いは記念日にのせて

第十話


 今日は配属部署が決定する日。
 この研修メンバーとお別れなのも悲しい。とっても仲良くなれたから。
 だけど配属されても今月末までは十六時までの終業時間。
 十七時までの残り一時間はこの大ホールに新人全員集まって一日の振り返りと自分の仕事内容をメンバーに簡単に説明するという最後の研修が残されている。
 いかに端的にうまく伝えられるかの訓練らしいと聞いて今から緊張している。
 それにはリーダーの霜田さんも参加するからそれだけでも楽しみだったりする。だって研修終わったら接点なくなっちゃうもん。
 同期なら研修お疲れさま会とか同期会とかしょっちゅう会えそうだけど霜田さんは違う。
 同期じゃないし、きっと働くフロアも休憩時間も合わないだろう。
 そう考えただけで胸の奥の方が針で刺されたみたいにちくんと痛んだ。

 部署ごとにひとりずつ発表されていく。
 名前を呼ばれた人は返事をして立ち上がり、迎えに来たホールの端にいる上司に頭を下げる。
 スポットライトは当たらないものの一気に視線を集めることになるので緊張のあまり手に汗を握ってしまう。
 研修ファイルを見ながら呼ばれた同期がどのフロアの部署に配属されたかチェックしていく。
 仲良くしてくれた人は特に覚えておきたい。
 何かしら相談に行くかもしれないし、研修メンバーは必ずだけど。
 
「――広報部、第二課。出水千晴」
「っ、あっ! はいっ!」
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