強引上司の恋の手ほどき
***

「千波、菅原千波!! ちゃんと話聞いてる?」

美月さんに声をかけられてハッと我に返った。いけない仕事中だ。

ランチのときに中村くんとのことを美月さんに話したせいか色々と思い出してしまっていた。

「ここの大阪支社の数字だけど、ちょっと私が思ってたのと違うんだよね。確認して間違いがなければそれでいいんだけど、念のため見てくれる?」

「はい。わかりました」

入社以来経理一筋の美月さんは独自の視点で数字を見る。私はまだその域まで達していない……というか、あんなふうに数字を見て色々わかるようになるのだろうか?

「大阪支社か……えーっと。これだったら、あのファイルを見ればわかるか」

ひとりでブツブツといいながら、サーバーのデータを開いて確認した。

ん……たしか先月も大阪支社の数字調べた記憶があるなぁ。なんでだっけ?

数字を確認すると、おかしなところはなさそうだ。

「美月さん合ってるみたいですよ」

「そう。だったらそのデータ課長にメールで送っておいて頂戴」

「わかりました」

言われたとおり、すぐにメールを作成して送る。

時計を確認するとすでに十六時だ。あんまりのんびりしている時間はなさそうだ。

中村くんとの約束のために、急いで仕事を終わらせたのだった。
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