強引上司の恋の手ほどき
「とにかく! あんな女ここでふたりで言い争いする価値もないですよ」

話を切り上げようとしているのがわかったが、今日はコイツに菅原に対しての態度を改めるように言うのが目的だ。

「そういうことを、これから先、気安く口にするな。アイツはもうお前のものじゃない“俺の”だ。言っておくが俺は自分のものをそんな風に扱われるのは我慢ならない」

一歩中村に詰め寄った。

「今後そういうことがあれば、全力で潰しにかかるぞ。覚えておけ」

「は? なに熱くなってるんスか? もういいですか」

そういうと、俺の返事を待たずに踵を返して出口に向かった。

俺も今日はこれ以上深追いするつもりはなかった。

とりあえず、どうにか菅原をスタートラインに立たせた。あとは、俺に向かって走ってくるだけでいい。

しかし、それはいつの事になるのか。

自分では辛抱強い方だと思っていたが、中村という枷がなくなった今、俺はそれほど長く待てそうにもなかった。
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