強引上司の恋の手ほどき
「菅原をお前と一緒にするな。彼女の他にも女がいるんだろう?」

一部の社員の間で中村の素行の悪さを指摘する噂を耳にした。

表面上みせる爽やかな表情とは別に、冷酷な一面も持っているらしい。俺もそれにはうすうす気がついていたし、勘のするどい金子もコイツを良くは思っていなかった。

「だとしたら、どうなんですか? 千波だって俺とちゃんと別れるまえに、課長とできてたんですよね?」

中村は歪んだ笑みを浮かべるている。

「勘違いするな。菅原はあくまで、お前と線を引くまではキチンとしていたぞ。俺が待ちきれなかっただけだ」

実際のところは、本当にいまのところ俺と菅原は関係ない。しいて言うなら“ツバ”を付けた程度だ。

「どうして、深沢課長ほどの人が千波にこだわるんですか? マジでなんもできないですよ。経理課だっていうからちょっとは役に立つと思った……っ」

「菅原がなんの役に立つって言うんだ?」

「役に立つって言うか……」

さっきまで噛みつかんばかりの勢いで話をしていたのに、急にトーンダウンした。
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