浸透
怖くなり、振りほどこうとするが、力が強く離れない。

「離せ、離せよ!」

女の肩を強く押すと 何と手が千切れたのだ。

「はっ、あっ、あ」

どさっと鈍い音と共に女は倒れた。

俺は声が出なくなり、動けもしなかった。
女の冷たい手は、俺の手を握り締めたままなのだ。

「帰る」
女がまた言った。

強く握り締められた手は女の氷のような体温とで感覚を失い、その麻痺は腕を伝い、全身に広がっていく。

冷凍室に閉じ込められた様な絶望感に襲われた。

凍える

「ねぇ、大丈夫?」

紀葉夏の声と共に、目の前の風景が元に戻った。

そこにはあの女も、千切れた手もなく、不思議そうな顔をした汗だくの紀葉夏が居た。

「うわっ、手冷たい」俺の手を取り、自分の額に当てている。

右手は氷を握り締めていたように、感覚が無かった。
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