動き出した、君の夏
ばたん
部室のドアを閉めると瑞希が喉を抑えて呟いた

「あー…喉痛ぇ」
『瑞希叫びすぎなんだよー(笑』
「だって高田が…」

笑いながら歩いていると、グランドに出た

「いっちにー いっちにー いっちにーさんしー」
「「「「いっちにーさん」」」」

白いユニフォームを泥だらけにしながら
長い隊列を作ってグラウンドを何周も走っている野球部が居た

「野球部、まだやってんの!?」
『まぁ、春の高校野球もすうぐだし。ウチの野球部ってめっちゃ期待されてるし』
「確かにー…」

ウチの学校は、陸上に限らず野球や空手の超強豪校
野球部なんて特に有名で、春も夏も甲子園に行くのは当たり前
優勝経験だって数知れずで、全国から超エースの生徒が集まってくる

今ジョギングしているのは一軍のメンバーで
一軍 二軍 三軍ってプロ野球みたいにランク分けされていて
一軍なんてのはほぼ全員卒業すれば球団からオファーが来るような…
いわゆる【才能】と【努力】の両方を併せ持った選手の集まり

「よくやるよー。あんだけやってよく退部する奴居ないよね」
『多いよ。でも部員数が多すぎて目立たないんだよ』

そう。一軍なんてのは100人近く居る部員のトップオブトップ

その最後尾に――君が居た
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