おでこにキス。
私は、ななめに流している前髪を触る。


18歳の私はあの日、昴に可愛いと言われてから


前髪をあげて、おでこを出していた。


昴が、可愛いって言ったから。


ただそれだけの理由で。


25歳の今。


ううん、昴と別れてからおでこを出すことをやめた。


何の意味もなくなってしまったから。


生ぬるい風が、ぶわっと教室のカーテンを揺らす。


「……次は、西洋堂かな。」


私は、次の目的地、西洋堂へ向かうことにした。


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