ウソ夫婦

「し、し、してる訳がないでしょ?」
翠は、動揺しすぎて、声が裏返った。

「そうなの? 信じられないっ」
ジェニファーが大げさに首を振る。

「ミドリのその姿を毎日見て、手を出してこないの? ソウタはチキンね」
「FBIだって許されないでしょ、そんな警護中の人と、その……寝るなんて」
「まあね」
ジェニファーがごくりとビールを飲む。

「でもあのソウタよ。セックス好きだし、うまいしね」

翠の思考が停止した。

うまい? おいしい? ……なにそれ。

「ミドリ? 大丈夫?」
「……えっと……おいしい?」
翠は恐る恐る聞いてみた。

「上手ってこと。ミドリ、日本人のくせに日本語わかんないの?」
「……上手って、あ、わかった。自分で言ってたんだ。自慢してたってこと?」

ジェニファーが不思議そうに翠を見つめる。

「違うわよ。私が思ったの」

翠の頭がぐるぐるし始めた。

「それ……付き合ってるっていう意味?」

翠が尋ねると、ジェニファーが「ぶっ」と吹き出した。

「違うわよー。二〜三回寝ただけ」

寝た。

「一緒に眠ったんじゃないわよ。セックスしたってことよ」
ジェニファーが言った。


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