目には目を、歯には歯を
遠くの横断歩道に、人影が見えたら徐行。

交差点で曲がる時には、必ず一時停止して、絶対に歩行者が居ないことを確認する。

トラックなどの運転手は、車体のあちこちにミラーを付け、極力死角がないようにして走る。
発車時には、トラックの周りを一周して、子供などがいないかを確認する念の入れようだ。

――何なんだ、この国は?

ジャックでなくても、あまりの気の使いように驚くだろう。

そのために、車はあまり利用されることがなく、主な交通手段は電車だった。

道路は当然すいているが、制限速度をオーバーして走る運転手は皆無だ。

ジャックは、仕方なく、自分も走る時には制限速度を守って走ることにした。

――かったるい。ここをかっとばしたら気持ちいいだろうな。

ジャックはそう思うのと裏腹に、ゆっくり走るしかなかった。


事故や事件のみならず、横領や詐欺など、そういったことまで、ない。

ある種の人々にとっては、天国のような国。

――俺にとって、天国なのか、地獄なのか…

ジャックは、時折考え込むようになっていた。


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