妖の王子さま



「よお、蒼子」

「いずな・・・。ありがとう。白玖と協力してくれて」

「ふっ、利害の一致だ。別に、こいつのためじゃねぇよ」



いずなは吐き捨てるようにそう言って笑った。
白玖と笑い合う蒼子を見て、いずなはホッと胸を撫で下ろしていた。




「ったく、俺の出る幕はねぇみたいだな」

「え?」

「さて。いったん引き揚げるか。さすがに今まで一緒に戦ってたやつと戦うのはこりごりだ」




いずなはそう言って息を吐いた。
白玖はそんないずなに向き直る。




「そのことだけど・・・。おれは、手を引くよ」

「は?」

「元々、おれは妖の長には興味がないんだ。だから、お前みたいに、この世界をよくしようって思ってるやつがふさわしいと思う」




蒼子は、白玖の言葉に白玖を見上げた。
これまで何百年も続けていた戦いを、あっさりやめようと言い出したのだ。
その決断に、蒼子も驚いていた。




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