Verbal Promise(口約束)~プロポーズは突然に~

06 揺れるキモチ

「あい・らぶ・にゅーよーく……」
「し、仕方ないでしょ! お土産ゆっくり選んでる時間もなかったんだから!」

 6月の末に3泊5日でニューヨークへ社員旅行に行ってきた。現地でおみやげにと買ってきたハートがたくさんついたラブリーなI LOVE NY Tシャツを広げて永瀬は絶句した。
 強行スケジュールの中、僅かな自由時間にわざわざ買ってきたんだから文句は言わせない。自分へのおみやげもI LOVE NYグッズしか買えなかったんだから……。

「寝間着にでも使ってよ。私も使ってるし」
「へぇ~……」

 永瀬の表情。誰が使うもんかって顔してる。そしてTシャツを適当に小さく折ってビジネスバッグに無造作に放り込むと「さんきゅー」と一応礼の言葉はもらえた。

「で? どうだった、旅行」
「報告するまでもないよ。予定通り。毎日朝から晩まで歩きづめ。夜は飲んでばっかで……あっ」
「ん?」
「ニューヨークさ、なんと社長がいたの。私一応唯一の女メンバーだったからあれこれ気を遣って疲れたよぉ。その上行きも帰りも飛行機で社長と席の並びが同じでトイレに行きずらくて最悪だったぁ~」
「ふーん」
「じゃあ、私はこっちだから」

 会社帰りに永瀬を呼び出したのはただ旅行のおみやげを渡したかっただけだ。昔からどこかに遠出した時は当たり前のようにおみやげを買って贈りあう仲だったから今回もいつも通り買ってきただけ。
 しかし立ち止まって自分の自宅の方向へ身体を向けるとすぐに呼び止められて足止めをくらった。

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